写真部の体験レポート2014

減ってしまった清流長良川の天然鮎を、再生する。

テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で
「岐阜県民なら鮎の塩焼きを食べる時に、きれいに骨抜きが出来る」と取り上げられるほど、
鮎は岐阜に欠かせない魚です。

鮎の現状を学び、天然鮎の再生に携わっている方より話を聞き、
捕れたて天然鮎の塩焼きなどを楽しむプログラム。
嬉しいお土産付きです。

案内人は長良川博士の小島力さんと、長良川の漁師である山中さん、服部さん。
皆さん長良川に費やす情熱は半端ないです。

鮎は秋に長良川の河口から約50キロ上流の岐阜市内で産卵。
孵化した稚魚は伊勢湾に出て、餌が豊富な海で冬を過ごし、春になると長良川を遡上します。
その数が顕著に減ったきっかけは、海への出入り口に河口堰ができたことでした。
鮎は流れのあるところで生育します。河口堰により、流れが変わってしまったのでしょうか?

河口堰が全て悪いわけではないです。満潮時の洪水で苦しんできた輪中(いわゆる海抜0メートル)地帯の方々は河口堰により洪水被害が少なくなったのだと思います。

産卵のために上流から下ってきた鮎を「落ち鮎」と呼びます。
落ち鮎から取り出した卵を人工受精し、シュロの枝につけて河口堰横の孵化場に運びます。
長良川の流れの一部を人の手で行っているのです。
人工受精卵の数は6千万~1億粒。その数ができるだけ長良川に遡上することを願っての作業です。

鵜飼と長良川流域文化を世界無形文化遺産へ。

「無形文化遺産」は、ユネスコの事業の一つ。
同じくユネスコの事業である「世界遺産」が建築物などの有形の文化財の保護と継承を目的としているのに対し、民族文化財、フォークロア、口承伝統などの無形のもの(無形文化財)を保護対象とすることを目指したものです。

案内人の小島さんは、鵜飼と長良川流域文化を世界無形文化遺産にすることを目指し、頑張っています。

一昨年から行っているこのプログラム、今回ははじめて美濃市の『岐阜県魚苗センター』へ伺いました。

魚苗とは、鮎の稚魚のこと。こちらも長良川の漁師が採った落ち鮎から卵を絞り、受精卵から稚魚まで育てています。

美濃と関の2カ所を合わせて年間510万匹の鮎が孵化しています。この規模、しかも鮎だけの魚苗センターは全国でもここだけ。
鮎の稚魚が育つ汽水域の塩分濃度も成長に合わせて調整します。
稚魚が食べるプランクトン「ツボワムシ」も発見し、培養。
この岐阜の魚苗センターの生産技術が、いま日本中に広がっています。日本一の鮎を育む岐阜は、日本一の技術をもっていました。

プールのある所に入るには、長靴姿で。長靴も手も消毒して入ります。

長良川の天然鮎の定義は以下の通り。

100%天然鮎──自力で産卵し、伊勢湾に出て、また長良川に遡上してきたもの。
80%天然鮎───人工授精させ河口堰横の孵化場から伊勢湾に行き、また長良川に遡上してきたもの。
50%天然鮎───この魚苗センターで孵化し、放流しても伊勢湾には行かないで、長良川の藻を食べ生育したもの。60~100日自然の中で暮らしたものは天然と呼ぶ。

現在長良川の鮎は、50~70%くらいが放流鮎だそうです。

岐阜市鏡島の瀬張り漁場に戻りランチ。

鮎の塩焼きと、朝から天日干しして焼いた鮎の開き。
獲れたての天然鮎、旨いに決まってますよね。
鮎は2つ卵巣をもっていて、卵を絞ったあとの鮎ももう1つ卵を腹に持っているので、メスは卵入り。

焼き手は、おんぱくのオープニングイベントから塩焼きを400匹以上焼いてすっかり串を刺すのも手慣れた、おんぱくプロデューサーの蒲。
炭火でじっくり焼くため、骨まで食べられます。

焼きたてのふんわりした身と香りのよい味に、みな自然と笑顔になります。
今回の開催は平日で参加者が定員に達していなかったため、一人あたりの鮎が多く食べ放題状態。
私もご相伴に預かり、10匹も頂きました(笑)

瀬張り漁も見学しました。
この時期の落ち鮎を獲るための漁法で、「そじ」と呼ばれる仕掛けを使います。
川床に沈めた白いビニールと、川面にはったロープが水をはじく音に驚いて鮎が止まったところを、手投げ網で獲ります。

この漁で獲れた天然鮎を、お土産として持ち帰ります。
皆さん大満足。

落ち鮎の瀬張り漁は、他のプログラム(日比野克彦とあるく長良川アート散策)でも訪れました。
そのときは獲れた鮎を見て「美味しそう!」と言っていましたが、
今回あがった声は「かわいい!」でした。




プログラム詳細:
落ち鮎の瀬張り漁&天然鮎再生ツアー② 魚苗センター編