写真部の体験レポート2014

描くことで輝きだす、いつもの川辺。

 見慣れた足元の川辺を鮮やかな日本画の画材で描くうち、小さな雑草の紅葉や水滴、縞模様の石、子どもの頃見た水辺の生き物の記憶が輝きだします。

 岐阜県美術館で開催中の企画展「今をいろどる~現代日本画の世界~」に出品中の日本画家、神戸智行先生による、日本画ワークショップの模様です。

 実はこのプログラム、事務局スタッフで個人的に申し込んだ人が4人もいた人気ぶり。神戸先生の絵に魅了されました!

ギャラリートーク

 まずは、美術館で神戸先生の作品を先生自らご解説いただきます。

 岐阜市出身の神戸先生が描く、木曽川や長良川の川辺を描いた作品はデザイン的で、小さな生き物が繊細な描写でそこかしこに隠れています。

見慣れた川の景色が、先生に描かれることで、自分の子どもの頃からの記憶とともに「こんなに美しくて豊かだったんだ」と愛おしく思えてきます。

 作品は、薄い和紙に銀箔をはって、またその上に薄い和紙を重ね、その上に魚を描いてはまた和紙をはるなど、何層もの和紙で水の深さを表現している、途方もない手間がかかっています。ぜひ、実際に作品をご覧になることをおすすめします。


 参加者に、今回のワークショップ一番の衝撃が伝えられました。

「今回のみなさんの作品は、神戸先生のご厚意により、
 これらの神戸先生の作品とともに飾られます。」

「(写真の作品に)みなさんの絵が加わって、作品が完成します」

 ええええー!!!!美術館の本展示室ですよ!?私も絵を趣味で書いていましたが、このメインルームに飾られるなんて、プロ中のプロしか許されない聖域!
出展料だけでも普通に参加費を超えているのでは。
 いえいえ、それよりも、そんな大切な展示に出展されている神戸先生にとって、素人の作品をならべるというのは、ご自分の世界観を壊してしまうかもしれません。
なんというリスキー!なんという謙虚さ!
 これは……ワークショップとはいえ、真剣ですよ。

川原でのフィールドワーク

 バスで長良川に移動し、フィールドワーク。与えられたテーマは「水辺の足元を、真上から描くこと」。前日からの雨で川は増水し、どんよりと曇り空でしたが、なんとかこのフィールドワーク中だけでも雨はふらず、川原で持ってきたお弁当を食べることもできました。

 こんな天気なりに、発見もあるもの。
 小さな雑草でさえ紅葉して、そこに水滴が光る様子。
 増水した水の中に沈んだ草花。
 泥が乾いて白く化粧した石たち。
 光の反射が弱いからこそわかる、水面にうつった山の影。
 いつもより岸辺で休憩していた水鳥たち。

 写真を撮ったり、スケッチしたり。

 バスの行き帰りには、神戸先生とスタッフとのトークも聞きました。

はじめての日本画画材に、まずは理解を深めます。

日本画は、宝石などを砕いた岩絵の具(色によってはものすごく高価)から、初心者用の水干絵の具や絵手紙に使う顔彩まで、値段も質感も扱い方の難易度も様々。
 先生からニカワの溶かし方、絵の具のとき方などを教わります。

 私も、この絵の具に対するハードルが高いため、日本画は初挑戦でした。
 どれくらいにじむか、伸びるか、重ね塗りができるのか、おそるおそる。

描きます。

案外、みなさん着々と描いていきます。
「あ、この方、普段から描いていらっしゃる方だな」とお見受けする方から、
おそらく絵は不慣れだけれど、描きたいものはすでに明確な方まで。

 私は……。日本画独特の色の発色に、ふりまわされながらもドキドキ楽しく描いていました。水彩画に近いですね。

各自、完成です。

 みなさんの絵です。
 私の絵は、先生とは、石のサイズも、角度も、というかなにより技量も違うのですが、本当に並んじゃうんでしょうか。緊張です。でも、楽しかったー。

実際に展示中です。(写真をクリックすると拡大します)

 美術館から、実際に展示された写真をご提供いただきました。一番小さい円の作品が参加者のものです。

 わぁ!すごい、さすが神戸先生。素人の雑多な作品を、絶妙にまとめあげて、さし色にしてくださいました。レイアウトひとつにも、感性が光りますね。感激です。

 ぜひ会期中にご覧ください。


岐阜県美術館
「今をいろどる~現代日本画の世界~」
 2014年10月31日(金)~12月14日(日)

(作品写真提供:岐阜県美術館
(本文内写真:山吉りか、蒲勇介/文章:奥村裕美)

プログラム詳細:
日本画家・神戸智行と長良川の川原を語る・歩く・描く

短縮版レポートもあります: